夜中にふと目が覚め、ひんやりとした感覚と鼻をつく臭い。「またか…」お子さんのおねしょに気づいた瞬間、途方に暮れてしまうことはありませんか。
特に簡単に洗えないマットレスの場合、その気持ちよ-く分かります。「このシミと臭いはもう取れないのでは」「時間がたった汚れはどうすればいいのだろう」そんな不安で頭がいっぱいになることもあるでしょう。
ですが、ご安心ください。そのお悩み、この記事で解決できるかもしれません。
この記事では、単に掃除の手順を紹介するだけではありません。マットレスの素材という視点から、コイルやウレタンといった種類別に最適な対処法を詳しく解説します。
さらに、クエン酸や重曹などご家庭にあるアイテムの賢い使い分けや、頑固なおねしょシミへの最終手段まで、あなたの「知りたい」にしっかり応えます。
この記事を読み終える頃には、おねしょへの漠然とした不安が「いつでも冷静に対処できる」という自信に変わるはずです。正しい知識を身につけて、ご家族が安心して眠れる快適な毎日を取り戻しましょう。
- 夜中のおねしょは「吸い取り」と「中和」が最初のポイント
- マットレスの素材(ウレタン・コイル等)で対処法は全く違う
- クエン酸(酸性)はアンモニア臭、セスキ炭酸ソーダ(アルカリ性)は皮脂汚れに有効
- 時間がたった臭いやシミは「酸素系漂白剤」で段階的に対処する方法があります
- 消臭スプレーは掃除の「仕上げ」。臭いの元を除去しないままの使用は逆効果になる場合も
- おねしょ対策の基本は「防水シーツ」などによる物理的なガードです
- マットレスを長持ちさせるには「徹底した乾燥」と「換気」
おねしょマットレスの洗い方

お子さんがおねしょをしてしまった時、その後の対応がマットレスの寿命を大きく左右することがあります。ここでは、焦らず的確に対処するための具体的な掃除方法を、手順を追って解説します。マットレスは素材によって水や熱への耐性が大きく異なるため、ご家庭のマットレスに合った正しい手入れ方法を知ることが何よりも大切です。
おねしょ発見直後の初動対応から、素材別の詳しい洗い方、そしてクエン酸や重曹といった便利なアイテムの使い分けまで、おねしょ掃除の全容を解説します。正しい知識があれば、頑固なシミや臭いにも落ち着いて対応できるようになるでしょう。一つずつ確認し、大切なマットレスを守っていきましょう。
【この記事の注意事項】
この記事で紹介する方法は、一般的な知識に基づくものであり、全ての製品の安全を保証するものではありません。
作業前には、必ずマットレスの洗濯表示や取扱説明書をご確認ください。素材やメーカーの指示が最優先されます。
化学薬品の使用は、変色や劣化のリスクを伴うため、必ず目立たない場所で試してから、自己責任の上で慎重に作業をお願いいたします。
夜中のおねショマットレス 最初の対応
夜中におねしょを発見した時、最も大切なのは焦らず、迅速に行動することです。結論から言うと、やるべきことは「水分の除去」と「臭い原因の中和」の2点に絞られます。これらをすぐにできるかどうかで、翌朝の掃除の難易度が大きく変わってきます。液体がマットレス内部へ染み込み、アンモニア成分が定着するのを防ぎます。
まず、濡れたシーツやパジャマを取り替えます。このとき、汚れた面を内側に折りたたむようにすると、被害の拡大を防ぎやすくなります。
次に行うのが、最も重要な水分の吸い取りです。乾いたバスタオルや吸収性の高いペットシーツなどを汚れた部分に押し当てます。その上から体重をかけて、水分を移し取るようにしてください。
ここで注意したいのは、こすらないことです。こすると汚れの範囲を広げ、マットレスの繊維を傷める原因になりかねません。あくまで真上から圧力をかけ、「吸い取る」ことに集中するのがポイントです。タオルを何度か替え、ほとんど水分が移らなくなるまで繰り返しましょう。
水分がある程度なくなったら、応急的な消臭処置を行います。ここでクエン酸の使用が考えられますが、これはメーカーが推奨する方法ではない場合がほとんどです。試す場合は、水200mlにクエン酸小さじ1杯程度溶かした「クエン酸水」など、ごく薄い濃度で、目立たない場所でテストしてから自己責任で行ってください。
おねしょの臭いの主成分であるアンモニアはアルカリ性のため、酸性のクエン酸が中和し、臭いを和らげる効果が期待できます。スプレーした後は、再び乾いたタオルで水分をしっかりと吸い取ります。夜中に行うのはここまでで十分です。
洗えないマットレス素材別の洗い方

マットレスと一口に言っても、その中材はウレタンやコイルなど多岐にわたります。そして素材によって水や熱への耐性が全く異なるため、おねしょの洗い方も変える必要があります。
もし素材に合わない方法で掃除をすると、寝心地を損なったり、カビの原因を作ったりと、マットレスの寿命を縮めることになりかねません。
ここでは、代表的なマットレスの素材別に、一般的な対処法を解説します。ただし、これはあくまで一般的な情報です。必ずお手持ちのマットレスの取扱説明書を確認し、その指示に従ってください。
【早見表】素材別おねしょ対応のポイント
素材の種類 | 水洗い | 熱(お湯/ドライヤー温風) | 掃除のポイント | 乾燥のコツ |
---|---|---|---|---|
高反発ウレタン | △(叩き洗いのみ) | ×(変質の可能性) | 水分は最小限に。絞るのは避ける | 風通しの良い日陰で、サーキュレーター活用 |
低反発ウレタン | ×(劣化の可能性) | ×(変質の可能性) | 固く絞ったタオルで優しく拭くのみ | ドライヤーの「冷風」で慎重に乾かす |
高反発ファイバー | ◎(丸洗い可能) | △(40度以下) | シャワーで洗い流せる。洗濯表示を確認 | 水切れが良い。日陰で立てかけて干す |
コイルマットレス | ×(内部の錆びの可能性) | △(表面のみ) | 掃除は表面限定。内部に水分を入れない | 布団乾燥機が最適。徹底的に表面を乾燥 |
ラテックス | ×(劣化の可能性) | ×(硬化の可能性) | 直射日光は避ける | 風通しの良い室内で完全な陰干し |
高反発ウレタンの洗い方
高反発ウレタンは、比較的、水に対して耐久性がある素材です。しかしスポンジのように水を吸う性質があるため、雑巾のように絞ることは避けたほうが良いでしょう。
内部のウレタン構造が壊れてしまう可能性があるためです。対処法としては、汚れた部分にぬるま湯と中性洗剤を少量含ませたタオルを押し当て、汚れをタオルに移す「叩き洗い」が基本となります。
洗剤を使った後は、きれいな水で固く絞ったタオルで洗剤成分を根気よく拭き取ってください。最後に乾いたタオルで徹底的に水分を吸い取って仕上げます。
高反発ウレタン乾燥のコツ
高反発ウレタンの乾燥で最も重要なのは、風通しです。多くのメーカーでは、直射日光はウレタンを劣化させる原因になりうるため、風通しの良い日陰で乾かすよう推奨されています(参照:GOKUMIN公式サイト)。
これはあくまで一例であり、必ずご自身の製品の取扱説明書で正しい乾燥方法を確認してください。
壁に立てかけ、マットレスの裏側にも空気が通るようにするのがポイントです。サーキュレーターや扇風機で風を当て続けると、乾燥時間を短縮しやすくなります。完全に乾くまでには数日かかる場合もあるため、焦らずじっくりと乾燥させることが、カビを防ぐ上で非常に大切です。
低反発ウレタンの洗い方
低反発ウレタンは、水分にあまり強くない素材と言われています。一度水分を大量に吸い込むと、その水分をなかなか放出できず、加水分解(かすいぶんかい・水と反応して性質が変わること)を起こして傷んでしまう可能性があります。
そのため、低反発ウレタンのマットレスは、基本的に水洗いできないと考えましょう。対処法は、高反発ウレタン以上に水分量を抑えた拭き掃除に限られます。固く、さらに固く絞ったタオルで、汚れた表面を優しく叩くように拭き取ります。
洗剤を使う場合もごく少量にし、その後は念入りに水拭きと乾拭きを繰り返して、洗剤成分と水分を完全に取り除くことを心がけてください。
低反発ウレタン乾燥のコツ
水分を極力使わない手入れが基本ですが、それでも湿気は残ります。乾燥させる際は、ドライヤーの「冷風」を使うのが一つの方法です。
マットレスから30cm以上離して、同じ場所に熱が集中しないように注意しながら乾かします。温風はウレタンを変質させる恐れがあるため、使用は控えるのが賢明です。
乾いたタオルを何枚も使って、地道に水分を吸い取り続けることが、低反発ウレタンを長持ちさせるコツです。
高反発ファイバーの洗い方
ポリエチレンなどの樹脂を編み込んで作られたファイバー素材のマットレスは、家庭で丸洗いできる点が大きな特長です。おねしょをしてしまっても、カバーを外して浴室のシャワーで洗い流せます。
例えば、エアウィーヴの公式サイトでは、40℃以下のぬるま湯で洗い流すことが推奨されていますが(参照:airweave公式サイト)、これはあくまで同社製品の場合です。
中材が絡み合っている構造上、内部に汚れが残りにくく、衛生的に保ちやすいのが嬉しい点です。ただし、製品によって洗い方に指定がある場合もあるため、必ずお手元の製品の洗濯表示を確認してから作業を行ってください。
高反発ファイバー乾燥のコツ
ファイバー素材は非常に水切れが良く、乾燥しやすい特性を持っています。シャワーで洗い流した後は、浴室である程度水を切り、風通しの良い日陰に立てかけて干します。
直射日光は樹脂素材を劣化させる可能性があるため避けるようにしましょう。他の素材に比べて格段に早く乾きますが、念のため丸一日以上はしっかりと時間をかけて、内部まで完全に乾いたことを確認してから使用を再開してください。
コイルマットレスの洗い方
ボンネルコイルやポケットコイルといったスプリング(ばね)を使用したマットレスは、内部を洗浄することができません。内部に水分が入ると、スプリングが錆びてしまったり、詰め物にカビが発生したりする原因となり、マットレスの寿命を縮めてしまうためです。
したがって、掃除はマットレス表面の布地(キルティング層)のみに限定して行います。
掃除方法はウレタンマットレスと同様に、固く絞ったタオルでの叩き洗いが基本です。内部に水分を浸透させないよう、使用する水分量は最小限に抑えることを強く意識しましょう。
コイルマットレス乾燥のコツ
コイルマットレスの乾燥は、表面の湿気をいかに早く取り除くかが重要になります。布団乾燥機があれば最も効率的に乾かせます。ない場合は、ドライヤーの温風と冷風を切り替えながら、少し離れた位置から風を当てて乾かす方法があります。
掃除が終わったらすぐに壁に立てかけ、マットレスの裏側にも空気が流れるようにすると、内部に湿気がこもるのを防ぎやすくなります。扇風機などで風を送り続けるのも有効な手段です。
ラテックスの洗い方
天然ゴムを主原料とするラテックスマットレスは、紫外線と熱に弱いデリケートな素材です。多くのメーカーで、直射日光は素材の硬化やひび割れを引き起こす可能性があると注意喚起されています。
水洗いも基本的には推奨されていません。もし、おねしょをしてしまった場合は、他の素材と同様に、固く絞ったタオルで優しく叩くように汚れを拭き取ります。
ラテックスは抗菌作用が高いとされていますが、尿の成分が残ると劣化の原因になるため、丁寧な拭き取り作業が求められます。
ラテックス乾燥のコツ
ラテックスの乾燥は、何よりも「直射日光を避ける」ことが鉄則です。必ず、風通しの良い室内で陰干ししてください。
ウレタン同様、熱にも弱いため、ドライヤーの温風や布団乾燥機の高温モードの使用は避ける必要があります。乾いたタオルで根気よく水分を吸い取り、あとは自然乾燥に任せるのが最も安全な方法です。素材の特性を理解し、過度な熱や光を与えないよう慎重に取り扱いましょう。
クエン酸・重曹・セスキ炭酸ソーダの使い分け

おねしょ掃除の際に名前が挙がるクエン酸、重曹、セスキ炭酸ソーダ。これらは性質が異なり、汚れの種類によって効果が変わるため、適切に使い分けることで掃除の効率が上がります。ただし、これらは化学薬品であり、メーカーが推奨していない使用方法はマットレスを傷める可能性があります。使用する際はそのリスクを理解した上で、自己責任でご判断ください。
クエン酸・重曹・セスキ炭酸ソーダの違い
まず、これらの最も大きな違いは液性、つまり酸性かアルカリ性かという点です。
・クエン酸:酸性です。レモンなどに含まれる成分で、水アカなどのアルカリ性の汚れを中和して落とすのが得意とされています。
・重曹:弱アルカリ性です。油汚れや皮脂といった酸性の汚れを分解する力があります。粒子が細かいため研磨剤としても使われますが、消臭効果も持ち合わせています。
・セスキ炭酸ソーダ:重曹よりも強いアルカリ性を持つ物質です。水に溶けやすい性質があり、スプレーにして使うのに適しています。
おねショ汚れとの相性
性質の違いから、おねしょ掃除における最適な使い分けが見えてきます。
おねしょのアンモニア臭は「アルカリ性」です。そのため、臭いを元から中和して消すには「酸性」のクエン酸が効果的と考えられます。クエン酸水をスプレーすることで、ツンとした臭いを化学的に和らげます。
一方、セスキ炭酸ソーダは皮脂や汗などの「酸性」の汚れに強いため、寝汗による黄ばみなどが気になる場合に有効です。
重曹は、掃除が終わって完全に乾いたマットレスに粉末のまま薄く振りかけ、しばらく置いた後に掃除機で吸い取るという使い方をすると、残った湿気や臭いを吸着してくれる仕上げの消臭剤として役立ちます。
危険!使用NG素材
これらのアイテムを使う上で最も重要な注意点は、塩素系の漂白剤と混ぜないことです。
消費者庁も注意喚起している通り、酸性タイプの製品と塩素系漂白剤が混ざると、有毒な塩素ガスが発生する危険があるためです(参照:消費者庁)。
「まぜるな危険」と表示のある製品との併用は絶対に避けてください。
また、アルカリ性の重曹やセスキ炭酸ソーダは、アルミ製品や畳、コーティングされた家具などを傷める可能性があるため、周辺の環境にも注意が必要です。
水に弱いウレタンやラテックスマットレスへの使用は、マットレスを損傷させるリスクがあることを理解した上で、水分量を最小限に抑えて慎重に行ってください。
ファブリーズの使用タイミングと注意点
おねしょの臭いが気になると、つい手軽な布用消臭スプレーに頼りたくなるかもしれません。しかし、結論から言うと、掃除前のマットレスに使うのはあまりお勧めできません。
正しくは、全ての掃除と乾燥が終わった後の「仕上げ」として使うのが望ましい使い方です。
その理由は、消臭スプレーの仕組みにあります。多くの消臭スプレーは、臭いの原因菌を除菌したり、香りで臭いをマスキング(覆い隠す)したりするものです。
おねしょの根本的な原因である尿の成分(尿素やアンモニア)そのものを分解・除去するわけではありません。
もし掃除前のおねしょで濡れた部分にスプレーしてしまうと、尿の成分とスプレーの香料、そして雑菌が混ざり合い、かえって不快な臭いが発生する可能性があります。さらに、スプレーの水分がマットレスの湿気を増やし、雑菌やカビが繁殖しやすい環境を作ってしまう恐れも考えられます。
ファブリーズなどを使うタイミングは、クエン酸水などを使って汚れを拭き取り、完全に乾燥させた後です。製品の公式サイトでも、汚れが原因のニオイは、汚れを落としてから使用することが推奨されています(参照:P&G「マイレピ」)。
あくまで補助的な役割として捉え、おねしょの成分を取り除くという本来の掃除を最優先に考えてください。
時間がたったおねショの匂い除去方法
おねしょから時間が経ってしまい、黄ばみや頑固な臭いが定着してしまった場合でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。家庭でできる対処法として、「酸素系漂白剤」を使ったシミ抜きがあります。
ただし、これはメーカーが推奨しない最終手段であり、マットレスの変色や劣化を招くリスクが非常に高いことをご理解ください。
ここで紹介するのは、オキシクリーンに代表される粉末タイプの酸素系漂白剤を使った手順です。
まず、小さな容器に酸素系漂白剤を入れ、40〜60度のお湯を少しずつ加えてペースト状に練ります。このペーストを、使い古しの歯ブラシなどでマットレスのシミの部分に直接塗り込み、優しく叩き込むようにして馴染ませてください。
こすってしまうと生地を傷めるので注意が必要です。この際、薬剤が直接肌に触れないよう、必ずゴム手袋を着用してください。
ペーストを塗った状態で、30分から1時間ほど放置します。この時間で漂白成分がじっくりとシミに浸透し、汚れを分解していきます。時間が経ったら、お湯で固く絞ったタオルを使って、ペーストと浮き上がった汚れを丁寧に拭き取ります。
漂白剤の成分が残らないよう、何度かタオルをすすぎながら繰り返し拭き取るのがポイントです。
最後に、乾いたタオルで水分をしっかりと吸い取り、サーキュレーターやドライヤーの冷風などを使って完全に乾燥させます。この方法は洗浄力が高いので、必ず目立たない場所で試して色落ちしないか確認してから、自己責任で行ってください。
おねショ汚れの放置を避ける掃除のコツ
おねしょの掃除において、「後でやろう」という放置が事態を悪化させる一番の原因です。時間が経つほど汚れは繊維の奥に浸透し、臭いやシミは頑固に定着してしまいます。これを防ぐ最大のコツは、「すぐ取りかかれる仕組み」と「掃除のハードルを下げる工夫」をあらかじめ作っておくことです。
まず、「おねしょ掃除セット」を常備すると良いでしょう。乾いたタオル数枚、ビニール手袋などを一つのカゴにまとめて、寝室のクローゼットなどすぐに取り出せる場所に置きます。いざという時に「あれはどこ?」と探す手間がなくなるだけで、行動への心理的なハードルはぐっと下がります。
次に、発見した時のルールを決めておくのも有効です。「見つけたら、とりあえず5分だけ動く」と決めておけば、夜中で眠くても最低限の初動対応(水分を吸い取る)だけでも済ませられます。この最初の5分が、翌日の本格的な掃除を何倍も楽にしてくれます。
そして最も効果的なのは、「予防策」を徹底することです。防水シーツを敷いておけば、万が一おねしょがあってもマットレス本体は無事なため、掃除はシーツの洗濯だけで済みます。
物理的にマットレスが汚れるのを防ぐことが、精神的な負担を減らし、放置を防ぐ一番の近道と言えるでしょう。
熱湯は使用禁止!素材別の理由
おねしょの汚れをきれいにしたい一心で、「熱湯消毒」を思いつくかもしれませんが、これは絶対に避けるべき方法です。
最大の理由は、尿に含まれるタンパク質の性質にあります。タンパク質は熱を加えると凝固する、つまり固まってしまう性質を持っています。
これは、生卵を茹でるとゆで卵になるのと同じ原理です。おねしょのシミに熱湯をかけると、尿中のタンパク質が固まって繊維にこびりついてしまい、かえって落としにくい頑固なシミを作り出してしまいます。
さらに、素材ごとにも熱湯が推奨されない明確な理由があります。
ウレタンやラテックスは、熱にあまり強くなく、熱湯をかけると変形したり、硬くなったりして元に戻らなくなる可能性があります。マットレスの体圧分散性(体にかかる圧力を分散させる性能)が失われ、寝心地が悪化する恐れがあります。
コイルマットレスは、内部のコイルを包む不織布やクッション材が熱で劣化する可能性も考えられます。
また、素材を問わず、高温のお湯はマットレス内部に強い湿気をもたらし、カビやダニが繁殖するための環境を作り出すことにもつながりかねません。
掃除の際は、必ず常温の水か、お手入れで湯の使用が許可されている場合でも、取扱説明書に記載された温度(多くは40度以下)を守ってください。
マットレスをクリーニングするべき目安
自宅でのセルフケアには限界があります。もし、さまざまな方法を試しても臭いやシミが取れない場合や、おねしょの範囲が広すぎる場合は、無理をせず専門のマットレスクリーニング業者への依頼を検討しましょう。
プロは、家庭にはない専用の機材と洗剤を使い、マットレスの内部から汚れと水分を強力に吸引する方法で洗浄を行います。
クリーニングを検討すべき具体的な目安は次の通りです。
ただし、依頼する前には注意点もあります。まず、料金相場です。
シングルサイズで1万円から2万円程度が一般的で、サイズが大きくなるほど高くなります。マットレスの購入価格によっては、買い替えた方がコストパフォーマンスが良いケースもあります。
そして最も重要なのが、素材によってはクリーニングを断られる場合があることです。特に、水に弱い低反発ウレタンやラテックス素材は、多くの業者で対応不可とされています。
事前に必ず、自宅のマットレスの素材を伝え、対応可能かどうかを確認する必要があります。
臭いを抑える換気と乾燥
おねしょ掃除の最後の仕上げであり、かつ最も重要な工程が「完全な乾燥」です。
どんなに丁寧に汚れを拭き取っても、マットレスの内部に少しでも水分が残っていると、そこから雑菌が繁殖し、生乾きの嫌な臭いやカビが発生する原因となります。臭いを根本から断つには、徹底した乾燥と日頃からの換気が欠かせません。
掃除が終わったマットレスは、まず壁などに立てかけて、表と裏の両面に空気が触れるようにします。この状態で、サーキュレーターや扇風機の風を直接当て続けると、乾燥効率が飛躍的に向上します。
特に湿度の高い日や冬場は、意識的に風を送ることが重要です。もし布団乾燥機をお持ちであれば、ぜひ活用してください。ただし、ウレタンやラテックスなど熱に弱い素材の場合は、必ず取扱説明書で対応温度を確認し、高温モードを避け、送風機能や低温モードを選ぶようにしましょう。
「もう乾いたかな」と思っても、表面が乾いているだけで内部には湿気が残っていることがあります。最低でも丸一日は乾燥時間を確保するのが理想です。
また、普段からの換気も臭い予防には非常に効果的です。朝起きたら寝室の窓を開けて空気を入れ替える習慣をつけましょう。
ベッドを壁にぴったりつけている場合は、少し隙間を空けるだけでもマットレスの裏側に空気の通り道ができ、湿気がこもるのを防げます。
月に一度でも、マットレスを壁に立てかけて室内で陰干しする「セルフメンテナンス」を行うと、常に快適な状態を保つ助けになります。
おねしょマットレスの対策と予防

ここまで、おねしょが発生した後の対処法について詳しく解説してきました。
しかし、最も理想的なのは、そもそもマットレスがおねしょで汚れない状況を作ることです。大変な掃除の手間や、マットレスが劣化する心配から解放されるためには、「予防」という視点が欠かせません。
「もう二度とあのおねしょ掃除を繰り返さない」ための、具体的で効果的な予防策を徹底的に解説します。マットレスを守るための基本アイテムである防水シーツの正しい使い方から、それぞれの家庭に合ったプロテクターの選び方、さらには究極の対策としての「洗えるマットレス」という選択肢まで、幅広いアプローチを紹介します。
日々のちょっとした工夫で、おねしょに対するストレスは劇的に軽減できます。未来の安心を手に入れるための知識を身につけていきましょう。
マットレスおねショ対策の基本
おねしょから大切なマットレスを守る上で、最も効果的な対策があります。それは、「マットレス本体に水分を到達させない物理的なバリアを設置する」です。おねショ後の大変な掃除から解放され、精神的な安心感を得るためにも、予防策はぜひ講じておきましょう。
その対策の基本となるのが、「防水機能を持つ寝具」の活用です。具体的には、「防水シーツ(おねしょシーツ)」や「マットレスプロテクター」といったアイテムが中心になります。これらの寝具は裏面にポリウレタンなどで防水加工が施されており、水分をしっかりとブロックしてくれます。
使い方はとても簡単です。普段お使いのシーツの下に一枚敷くだけで、万が一の時もマットレスまで染み込む事態を防げます。掃除は汚れた防水シーツと、その上の通常シーツを洗濯機で洗うだけで完了します。
マットレス自体を掃除する手間と比べると、その負担は大きく軽減されるでしょう。
この対策は、お子さんのおねしょ以外にも役立ちます。例えば、大人の寝汗や飲み物をこぼしてしまった時など、あらゆる液体の汚れからマットレスを保護できます。
マットレスは決して安い買い物ではありません。清潔で快適な睡眠環境を長く維持するためにも、防水アイテムの利用は、非常に賢い選択と言えます。
おねしょシーツの使い方と重ね方

防水シーツ(おねしょシーツ)の効果を最大限に引き出すためには、正しい重ね順で使うことがとても大切です。順番を間違えてしまうと、防水効果が十分に発揮されなかったり、寝心地が悪くなったりする原因にもなります。基本は「マットレスに近い層で水分をブロックする」と覚えておくと良いでしょう。
一般的に推奨される重ね順と、それぞれの役割は以下の通りです。
この順番が基本ですが、洗濯の手間を減らしたい場合は、ベッドパッドと防水シーツの機能を兼ねた「防水ベッドパッド」や「防水敷きパッド」を使用する方法も人気です。
その場合、「マットレス → 防水敷きパッド → ボックスシーツ」という、よりシンプルな構成になります。
ベッドパッドとの重ね方
ベッドパッドと防水シーツを両方使う場合、どちらを上にするかでメリットが変わってきます。ご家庭の状況に合わせて最適なパターンを選んでみてください。
パターンA:寝心地と汗対策を重視する場合
「マットレス → ベッドパッド → 防水シーツ → ボックスシーツ」
この順番は、ベッドパッドの柔らかな感触が体に近くなるため、寝心地が良いのが特徴です。また、寝汗をまずベッドパッドが吸収してくれます。ただし、おねしょの量が多いとベッドパッドまで汚れてしまい、洗濯物が増えるリスクもあります。
パターンB:防水性を最優先し、洗濯物を減らしたい場合
「マットレス → 防水シーツ → ベッドパッド → ボックスシーツ」
この順番にすると、水分は防水シーツで完全にブロックされます。そのため、下のマットレスはもちろん、防水シーツ自体も汚れにくくなります。洗濯するのは上のベッドパッドとボックスシーツだけで済むため、後片付けが楽になるでしょう。
一方で、防水シーツの上に寝具を重ねるため、製品によっては少しごわつきを感じたり、通気性が若干損なわれたりする可能性も考えられます。どちらを試すか迷った際は、まず防水性を優先するパターンBから始めてみるのがおすすめです。
防水シーツプロテクターの選び方
おねしょ対策として防水シーツやプロテクターを選ぶ際には、防水性能だけでなく、快適な睡眠を妨げないための機能性にも注目することが大切です。質の良くないものを選ぶと、蒸れて寝苦しかったり、寝返りのたびに音が気になったりする場合があります。
選ぶ際の重要なポイントは、主に3つあります。
一つ目は、「透湿性」です。
これは水蒸気(湿気)は通し、水滴は通さない性質を指します。透湿性の高い素材を使った製品は、汗による蒸気を外に逃がしてくれるため、寝ている間も蒸れにくく快適です。商品の説明に「透湿性」や「蒸れにくい」といった表記があるかを確認すると良いでしょう。
二つ目は、「素材と肌触り」です。
表面の生地が、肌触りの良いコットン(綿)のパイル地になっているものなどが人気を集めています。パイル地は吸水性も高いので、万が一の際にも水分を素早く吸収してくれます。上にシーツを重ねる場合でも、その感触は寝心地に影響を与えます。できるだけ自然な風合いの素材を選ぶことをお勧めします。
三つ目は、「取り付けタイプ」です。
マットレス全体をすっぽり覆う「ボックスシーツタイプ」と、四隅にゴムバンドが付いている「敷きパッドタイプ」に大別されます。ボックスシーツタイプはズレにくく、マットレスの側面まで保護できるのが利点です。敷きパッドタイプは着脱が簡単で、洗濯しやすい手軽さがあります。マットレスの厚みやお子さんの寝相なども考慮して、使いやすいタイプを選んでください。
洗えるマットレスの選び方

おねしょの頻度が高い場合や、衛生面を特に重視したい場合、マットレスそのものを「丸洗いできるタイプ」に買い替えるのも非常に有効な選択肢です。これは、究極の予防策とも言えるでしょう。
現在、家庭で洗えるマットレスとして主流なのは、ポリエチレンなどの樹脂を三次元に編み上げた「ファイバーマットレス」です。
ファイバーマットレスの最大の利点は、カバーだけでなく中材のファイバーまでシャワーなどで水洗いできる点にあります。もしおねしょをしても、汚れも臭いも洗い流せるため、常に清潔な状態を保ちやすくなります。
洗えるマットレスを選ぶ際のポイント
まず、「ファイバーの密度と硬さ」を確認します。一般的に密度が高いほど体圧分散性に優れ、へたりにくい傾向があります。硬さの表記(N:ニュートンという単位で示されることが多いです)も確認し、お子さんの成長や好みに合った寝心地のものを選びましょう。
次に、「通気性」の高さがもたらす注意点です。ファイバーマットレスは構造上、非常に通気性が良いのが特長です。しかし、おねしょをした場合、水分がマットレスを透過して下の床や畳まで濡らしてしまう可能性も考えられます。そのため、洗えるマットレスを使う場合でも、念のため防水シーツを併用するとさらに安心です。
最後に、「メンテナンスのしやすさ」も見ておきましょう。中材が3分割できるタイプなど、汚れた部分だけを取り出して洗える製品もあります。重い中材を丸ごと運ぶのが大変な場合には便利な仕様です。
価格や寝心地、そして日々の手入れのしやすさを総合的に比較検討し、ご家庭のライフスタイルに最適な一枚を見つけてください。
日々の臭い予防と干し方
おねしょの被害がなくても、マットレスは毎日の寝汗を吸収し、湿気がこもりやすい寝具です。この湿気を放置すると、雑菌が繁殖して嫌な臭いやカビの原因となることがあります。日々のちょっとした心がけで、マットレスを清潔に保ち、臭いを予防しましょう。
最も簡単で効果的なのは、「掛け布団をめくっておく」習慣です。朝起きたらすぐにベッドメイクをするのではなく、掛け布団を足元側にめくります。そうすることで、マットレスの表面にこもった一晩分の湿気を逃がしてあげられます。これだけでも、マットレスの乾燥を大きく促進できます。
次に、定期的な「換気と陰干し」も大切です。最低でも週に一度は寝室の窓を開け、新鮮な空気を取り込みましょう。さらに、月に一度はマットレスを壁に立てかけて、裏側まで風を通す「室内陰干し」を行うのが理想です。直射日光は多くのマットレス素材を劣化させる原因になりうるため、必ず日陰で行ってください。
ベッドフレームがすのこタイプであれば、マットレス下の通気性が確保されやすくなります。もしベッドを壁にぴったりつけている場合は、数センチでも隙間を空けるだけで空気の通り道が生まれ、湿気対策に有効です。
臭いが気になる場合は、マットレスが完全に乾いている状態で重曹を全体に薄く振りかけ、数時間後に掃除機で吸い取る方法もあります。重曹が湿気と臭いの成分を吸着してくれます。
おねしょ汚れ マットレスを守る最強対策 よくある質問(Q&A)

- Q夜中におねしょしたときの応急処置は?
- A
まずは乾いたタオルで水分を徹底的に吸い取ります。こすらず、上から体重をかけて押し当てるのがコツです。その後、水200mlにクエン酸小さじ1を溶かしたクエン酸水をスプレーし、再度タオルで水分を吸い取るといった方法が知られています。アンモニア臭を中和するのが目的です。本格的な掃除は翌朝で大丈夫です。
※化学薬品の使用は自己責任でお願いします。
- Q洗えないマットレスはどう洗う?
- A
固く絞ったタオルで叩くように汚れを拭き取る「叩き洗い」が基本です。中性洗剤を薄めたぬるま湯をタオルに含ませて汚れを叩き出し、次にきれいな水で絞ったタオルで洗剤成分を拭き取ります。最後に乾いたタオルで水分を完全に吸い取ってください。
内部に水分を浸透させないことが重要です。ただし、これも必ず取扱説明書の指示に従ってください。
- Qクエン酸とファブリーズは使える?
- A
クエン酸は、おねしょのアンモニア臭(アルカリ性)を中和するのに有効とされていますが、使用は自己責任となります。ファブリーズなどの消臭スプレーは、掃除と乾燥が全て終わった後の仕上げに使いましょう。掃除前に使うと、尿の成分と混ざって悪臭の原因になったり、湿気でカビを誘発したりする可能性があります。
- Q時間がたった匂いは自宅で取れる?
- A
はい、取れる可能性があります。粉末の酸素系漂白剤を少量のお湯でペースト状にする方法が知られていますが、これはマットレスを傷めるリスクが非常に高い最終手段です。シミの部分に塗り30分から1時間放置後、固く絞ったタオルで丁寧に拭き取り、乾燥させます。
色落ちの可能性も高いため、必ず目立たない場所で試してから自己責任で行ってください。
- Qコイルマットレスのおねしょ対処法は?
- A
コイルマットレスは内部のスプリングが錆びる可能性があるため、内部に水分を入れるのは避けるべきです。掃除は表面の布地部分に限られます。固く絞ったタオルでの叩き洗いを基本とし、水分を最小限に抑えてください。
掃除後は、布団乾燥機やドライヤーの送風機能を使って、表面を徹底的に乾燥させることが何よりも重要です。
おねしょ汚れ マットレスを守る最強対策 まとめ

今回は、多くのご家庭で起こりうる「洗えないマットレスのおねしょ」という問題について、対応方法を解説してきました。緊急時の対処法から頑固な汚れの落とし方、そして何より重要な予防策まで、幅広くご紹介しました。
突然の出来事に動揺するのは当然ですが、正しい知識と手順を知っておけば、冷静に対処できます。大切なマットレスを守り抜くことは十分に可能です。この記事でご紹介したポイントを振り返り、日々の安心につなげてください。
おねしょへの対応は、単なる後始末ではありません。それは、ご家族の快適な睡眠と健康を守るための大切なメンテナンスの一環です。
今回ご紹介した掃除方法や予防策は、一見すると少し手間がかかるように感じるかもしれません。しかし、一度正しい知識を身につけてしまえば、それは一生使える「家族を守るスキル」となります。
特に重要なのは、「予防に勝る対策はない」という考え方です。防水シーツ一枚を導入するだけで、おねしょに対する精神的なストレスは劇的に軽減されます。掃除の手間がなくなるだけでなく、「いつおねしょされるか」という不安から解放され、より穏やかな気持ちでお子さんを見守れるようになるはずです。
この記事が、あなたのおねしょに関する悩みを解決し、家族全員が毎晩安心して眠りにつける、そんな快適な日常を取り戻すための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
正しい知識を味方につけて、自信を持って対処していきましょう。